2018年6月18日月曜日

「あの」著作権に関わる論文を読んで、ハンドメイド作家が考えたこと


こんにちは
Poco a pocoです。
しつこいかもしれませんが、「ハンドメイド作家が考えたこと」シリーズです。

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今回のエントリは、超長文です。漢字多めです。そして、「ハンドメイド作家」要素以上に、「知財関係の仕事をしている人」要素が強く、さらに「フィギュアスケート好きな人」要素もけっこう入っている・・・かもしれません・・・

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私は、フィギュアスケートが大好きで、特に、プロフィギュアスケーターの町田さん(アマチュア時代には、ソチ冬季五輪5位、世界選手権銀メダル)が大好きなのですが、この方は、現在、大学院で、スポーツマネジメントに関する研究をされており、著作権に関する論文も書かれたということで、どのような論文なのか、とても興味がありました。一般的に、フィギュアスケートは、ショウにおいては、その著作性が認められているようでしたが、競技スポーツとしては、その著作性が認められているとは言えない現状ですので、やはり、著作性が認められているとは言えないハンドメイドに属する私としては、そのあたりについて記述されているのかな?と思い、興味津々!
そして、ある日、ツイッターの法律系アカウントの方からのRTで、その論文がウェブ上に掲載されていることを知りました。
しかし・・・その時は全く時間がなかったため「後で時間ができたらゆっくり拝見しよう♪」なんて思っていたまま・・・忘れていました・・・orz

そして、昨日のエントリ「ストールが似合う素敵なご婦人の話(別ウィンドウで開きます)に書いたように、ひょんなことから思い出し、ゆっくり論文を拝見した次第です。



本論文では、ベルヌ条約加盟国では、一般的に競技スポーツは著作物として認識されてこなかったという現状を踏まえつつ、IOCの見解をとっかかりとして、各種論文や判決文等を精査したうえ、フィギュアスケートを含む所定カテゴリの競技スポーツにも著作性(舞踊著作物としての著作性)が認められるべきだとの結論に至っています。

文字数制限があるのか、その結論に至る部分はずいぶんはしょられているように感じましたが(理解するためには、提示された多くの文献や判例を読む必要があるようです・・・読んだことの無い判例の方が多いよ・・・orz)(まあ、その分野に関係する人向けの論文だから当たり前です)(はい、時間を作って読みたいと思います)
『所定カテゴリのスポーツは、競技におけるものであっても「思想または感情を創作的に表現したもの」であり、著作権法上の「創作性」を有するものである』
ということが一番の主張であるように感じました。

そして、最後に、これら「振付」が著作物として広く管理運営され、流通されることの必要性や展望について記載されています。



私はフィギュアスケートが好きで、個人的には、様々なプログラムを「思想や感情を反映しているもの」と捉えていますし、競技カテゴリのフィギュアスケートプログラムからも、いろんな思想や感情を感じます。実際、この春夏のカラーテーマは、平昌オリンピックのアダムリッポン選手の演技を観て決まりました。

なので、私にとってはフィギュアスケートが「思想または感情を創作的に表現したもの」であることは勝手に織り込み済みでした。そのため、超個人的(当たり前ですが学術的ではないです!)には、一般的に「鑑賞を主目的とした美術作品」的な部分が著作物に求められることに対して、主目的が鑑賞ではない競技スポーツとしての立ち位置から、どのように切り込むのか、のあたりについて、詳細な記載があったら嬉しかったなあ・・・と思いました。
(いや、そのポイントは、あくまでも、私個人の興味ポイントです)(論文は、受賞もしている素晴らしいものですよ!!)(てか、提示されている文献や判例を読めばいいのかしら??)

と、いいますのは、ハンドメイド作品も、たとえ「思想や感情を反映している」ものであっても、一般的には「実用品」というくくりのため、「鑑賞を主目的とした美術作品」的なものではない、と考えられている(私の知る範囲では、です)(この場合、主に実用に向けて作成される個々のハンドメイド作品が対象であって、もちろん、作品の規模や内容によって大きく異なると思います)というのが現状だからです。なので、その現状を覆すヒントとなる何かがあれば嬉しいな~という、そういう下心で、本論文を拝見したからなのです。


ハンドメイド作品には、著作権が認められるか?
(この場合のハンドメイドは、陶芸等、美術に近い分野や、古典芸能に近い分野を除きます)

私は、知財関係の仕事をしているため、よく質問されます。
たまに、関係する判決が出ていないか、探してみたりしますが、はっきりと答えるための根拠とできるような判決文には、まだ、出会っていません(勉強不足だったらすみません)。
しかし、現状、そのハンドメイド作品が「実用物」である限り、著作権を主張するのは困難である可能性が大きいと考えられます。また、手作りの少数の生産活動をしている人が、著作権侵害訴訟を起こすことは、費用対効果の面からも、ほぼ、無いと考えられますし、白黒の線引きができるような判例は、なかなか出ないのではないかと思います。
(ちなみに、陶芸の分野では「火もらい」に類似した形状の花器について裁判が行われ、著作権等について参考となる判決文が存在します)(興味がある人はググってみてください)(他にも、直接的ではなくても、参考や指針となりそうな判例はいくつかあります)


基本的に、文章、絵、写真、彫刻などは、今のようにデジタル化が進む以前から、「その創作性」を表す部分の完全複写が可能だったので、権利を守る必要性が高かったのだと思います。
(私は、これらの法律は、社会が混乱することを防止することを大きな目的として制定されるもの、という認識をしています)
なので、デジタル化が進んだ今、「社会的な混乱」を避けるためにも、「プログラム」は著作物として守られるようになったわけですよね。

これに対して、ハンドメイド作品がコピーされることによる「社会的な混乱」は、ほぼ、存在しなかったことでしょう。ほんの少し時代をさかのぼると、ハンドメイドは、誰かの手によってつくられたものがその近くの人に利用される、換言すれば、公のものというより内々のものでした。また、現在のように、急速にSNSが発達する以前は、ハンドメイド作品が多くの人の目に触れる機会が極端に少なかったでしょう。また、ハンドメイドは、その大部分が実用品であり、創作性を有する作品であっても、その創作性を表す部分の完全複写は、文章、絵、写真などと比較して、容易であるとも言い難く、著作物として保護するに足りるものとは認識されていなかったのだと思います。


しかし・・・

ハンドメイド作品だって、それぞれの作家が創作性を駆使して生み出したものだよ!

思想も感情も入っている作品もたくさんあるよ!
(この場合、心を込めて作る、というのとは少し離れます)

という気持は、どこかに引っかかっています。
ぶっちゃけ言いますと、幼稚園児が書いた絵や作文に認められる著作権が、(いや、それはそれで素敵だけども!!)ハンドメイド作品に認められないって…少し…引っかかる…


しかし・・・

逆に、私の中では、私の作品は実用物であるという自負みたいなものもあります。
作品を手に取っていただいたお客様に使っていただけてこその作品ですから、実用品であることを意識するのは、私にとってとても重要な部分です。
(これは、先日、日本水彩展に行って (別ウィンドウで開きます)改めて感じました。多分、この点についてもあらためてエントリを作る機会があると思います)

また、私が製作するハンドメイド作品は、商品であるからこそ、法律的にコピーから守られます。不正競争防止法の改正により、発売3年以内の作品は殆どカバーできるのではないでしょうか?



そんなこんなで、少しモヤモヤしつつ、ハンドメイド作品に著作性が認められない現状について、それを受け入れている・・・っていうか、実際何かあっても、不正競争防止法があるから困るわけではないし・・・というのが、私の立場でした。
 (そして、ハンドメイドとこれらの法律との現状を踏まえて、法律の基本や役立つ条文・判例などを紹介する講座のアレンジ等を承っております←宣伝www)


でも、ハンドメイド作品の著作性を論ずる場合、模倣されないことが究極の目的とか目標ではないと、それは、ずっと思っていました

健全な流通

素晴らしい「ハンドメイドデザイン」が、模倣されるのではなく、利用したい人に対して正しく提示され、デザインした人に対して正当な対価が支払われたら、
 素晴らしい「ハンドメイドデザイン」が、個人の趣味だけではなく、正当な「仕事として」、物を作ったり、作り方を教える人へ正しいルートで流通されたら、
デザインする人にも、それを作ったり教える人にも、良いことだと思うのです。

音楽には、ジャスラックがあります。私たちは、対価を支払えば、個人的仕様の範疇を離れても、好きな音楽を決められた制限を守って利用することができます。
ハンドメイドにも、何か、そういう仕組みがあれば・・・


また、これらが実現されるか否かは、、ハンドメイドというカテゴリが、「文化」として認められるか否か?という部分も大きいと思うのです。
 (・・・という話までしてしまったために、去年11月の「加賀指ぬき講師養成プログラム」での講義では、めちゃくちゃ時間オーバーしてしまったのでした・・・orz)



ただ、これらは、無名のいちハンドメイド作家のたわごとにすぎず、無名のいちハンドメイド作家の手に負えるような事柄でもありません・・・


なので、今現在、著作性があるか否かの直接的判例がなく、著作性の確立や、著作者の権利の保護や、著作物の流通の確保のための道が、今まさに切り拓かれようとしている分野が、ハンドメイドの他にある・・・

これは、とても興味深いことなのです!!

そして、この論文の著者は、実力も実績も知名度もあるわけですから、これからの動きは、フィギュアスケートファンとしてのみならず、ハンドメイドに関する諸権利に関心を持ついちハンドメイド作家としても、期待が高まります!
町田さんの、今後の研究の発展を、ワクワク楽しみにしております
(*^_^*)

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昨日のエントリ「ストールが似合う素敵なご婦人の話(別ウィンドウで開きます)にも書いたように、このエントリは、町田さんの10月プロ引退発表を知る前に下書きを終了しておりました。なので、今、ちょっと悲しい(涙)です。そして、このタイミングでこのエントリを公開するのもなあ・・・って気も、ちょっとしています。でも、私にとってのブログというのは、その時々の「メモ書き」要素も大きいし、書き直しだしたら、ファン要素(気持ち的な部分)がだんだん大きくなってきそうな気がするので、あえて、リンク貼り付けや体裁の修正等のみをして、ほぼ下書きのまま、公開します。必要に応じて、その時々で加筆修正を行うのは、他のページと同様にしていきたいと思います。
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